Conformal Cooling 設計技術の高度化

基本概念の理解

はじめに
株式会社OPMラボラトリーは、精密金属3Dプリンタ技術を黎明期の2004年から開発をして参りました世界的な先駆者企業になります。今では、金属3Dプリンタ技術は世界的に認知され数多くの装置メーカが参入しており、熾烈なシェア争いが展開されています。

当社は創業当時より、精密金属3Dプリンタ技術を如何に市場へ適用するかの視点でサービスビューロ機能を重視して事業を展開して参りました、今では当社グループ全体で35名を超える設計者を有しており、量産適用で養った豊富な設計/製造経験を持った最大の設計技術者集団であります。
本寄稿は、我々の実務設計で気づいた点や注意すべき点を中心にコンフォーマルクーリング技術を探求していきたく考えています。

1:コンフォーマルクーリング技術について

精密金属3Dプリンタ技術の重要なソリューションとして『Conformal cooling channel』は皆様もご承知の通り、成形現場の冷却時間短縮、成形品質向上の有効な手段として世界中の先進企業が活用を推進しております。

同時に樹脂解析システムもコアテック社のMoldex3DやMoldFlowなどを筆頭に専用モジュールが準備され一般ユーザが事前に効果を予測する為のインフラも整備されており、今後更に適用が加速されていく技術であることは間違いありません。
しかしながら、設計手法において標準的な指標及び基準が用意されている訳ではない為設計された水管が必ずしも効果が発揮できる設計とは限らないケースも見受けられることがあります。以降に、当社が設計している基本的な指標/指針、いくつかのケーススタディを通じてコンフォーマルクーリング技術を正しく理解し、本技術の昇華、定着に寄与したいと考えています。

2:コンフォーマルクーリングチャネル定義及び大別

コンフォーマルクーリングの“コンフォーマル(Conformal)”の定義は、等角、等距離(図1-①、②参照)でキャビティ、コア内に配管設計をすることです。

図1-① Normal Cooling Channelの問製品面題“水管距離の不均一”

図1-① Normal Cooling Channelの問製品面題“水管距離の不均一”

図1-② Conformal Cooling Channelの有効性“製品面までの水管距離の均一、等距離化”

図1-① Conformal Cooling Channelの有効性“製品面までの水管距離の均一、等距離化”

しかし実際の金型は、製品形状複雑になり、複数の駒に分割しなければならないケースが増え、同時に多数のピンや穴等があり、水管干渉回避も同時に行わないといけないゆえ、言葉通り(Conformal)の等角、等距離にはなりません。
しかし精密金属3Dプリンタは、従来では複数に分割しか出来なかったキャビティ、コアを一体化製作できることが大きな特徴でありコンフォーマルクーリングチャネルを有効的に活用できる熱交換能力が非常に高い金型を作ることができます。

コンフォーマルクーリングの設計手法を大別すると

  • キャビティ、コア内にラティス状の空洞を設け、乱流的に冷媒を流す方法(図2参照)
  • キャビティ、コア内にストリームライン状に空洞を設け、冷媒を流す方法(図3参照)

図2 乱流タイプ水管

図2 乱流タイプ水管

図3 ストリームラインタイプ水管

図3 ストリームラインタイプ水管

があります、しかしながら乱流水管設計の場合、冷媒を流すラティス状の造形物は一見カッコよく感じますが、設計の難易度、現場適用後、詰まり等の金型メンテナンスの難易度、入子内面の空洞率が増えるため機械強度の低下もあり当社では、まだ研究開発段階であります。
このような背景もあり、本寄稿では、ストリームライン状のコンフォーマルクーリングについてさらに詳しく言及していくようにしたく考えています。

3:実用的なコンフォーマルクーリングチャネルの種類

図4に示す通り、ストリームラインで3次元的に配管設計する方法として

  • 1:ZIGZAG状に配管するタイプ
  • 2:SPIRAL状に配管するタイプ
  • 3:Parallel状に配管するタイプ

図4 ストリームライン水管の代表的3種類

図4 ストリームライン水管の代表的3種類

大きく3種類がある、金型の製品部形状や、利用される金型の分野によっても最適なタイプを選択して、採用する必要があります。

4:コンフォーマルクーリングの効果を最大限に発揮させるために

当たり前のことですが、コンフォーマルクーリングチャネルといえども適切な設計をしなければ期待の効果を得ることが出来ません。
例えば、水管径として、φ1未満の場合は、一般的な金型温調機を利用する場合においては圧力損失が大きく冷媒の通水効果が薄いという実験値(表1参照)があり1φ以上の設計をしなければ効果が発揮されません。

表1 円型水管径の流量評価結果

表1 円型水管径の流量評価結果

冷却回路(径α) φ0.5 φ1.0 φ1.5 φ2.0
温調圧力(Mpa) 0.96 0.80 0.76 0.76
流  量(L/sec) 0.2 0.8 2.1 2.8

また図5のように設計したチャンネルの水管径が途中でくびれ、断面積が変化する場合においても圧力損失が大きく、同じく効果が発揮されません。

図5 設計したチャンネルの水管径が途中でくびれ、断面積が変化する場合

図5 設計したチャンネルの水管径が途中でくびれ、断面積が変化する場合

このようなことがあるので設計者は基本的な知識を持って設計する必要があります。
コンフォーマルクーリングチャネルを設計する上での注意点を、更に詳しく探求していき、いくつかのケーススタディを通じてMolddex3Dでシミュレーションを行い、解析結果からも評価分析をしていきたく思います。

5:水管設計の基本ルールとして

冷却効果を最大限に発揮したい訳ですから、必然的に製品面近傍にコンフォーマルクーリングチャネルを配置したいというのが設計者の狙いです、しかし攻めすぎると水管内壁面と製品面の肉厚が薄くなり破損及び水漏れの原因となります。

当社では、設計したコンフォーマルクーリングチャネル(図6参照)における

  • 水管内部圧力評価(図6参照)
  • インサート部品に掛かる最大内部圧力評価(図7参照)
  • 金型表面に掛かる最大応力評価(図7参照)

をCAE解析にて分析をします。

図6 水管内圧解析例

図6 水管内圧解析例

図7 応力解析例

図7 応力解析例

その後、疲労試験測定データとの評価レビューを行い、最適化を実施しております。
これらの評価結果及び実績データを総合すると、プラスチックス金型における基本的な水管設計のルールとしては図8を推奨します。

図8 コンフォーマルクーリング基本設計ルール

図8 コンフォーマルクーリング基本設計ルール

6:水管設計の原理原則

図9は、成形時における金型内の水管と、樹脂製品への影響について基本原理を模式的に表したものです。

図9 水管外壁と製品面までの距離による温調効率原理

図9 水管外壁と製品面までの距離による温調効率原理

(模式図A/肉厚α>模式図B/肉厚βの場合、βの方が有利) (肉厚がイコールの時は模式図Cの乱流が有利)

水管と製品面までの金属肉厚が薄い方が熱伝導効率は高く、そして同じ条件であれば層流より乱流の方がさらに効率は上がりますので原理原則に基づき根拠のある設計をしなければ、いくらコンフォーマルクーリングチャネルを配置したとしても期待している効果を得ることは出来ません。

コンフォーマルクーリング設計を進めていくうえでは射出成形における冷却システム関係で重要な公式を理解しておく必要があるためお浚いも兼ねて説明します。

成形品の冷却時間は

  • 成形品の最大肉厚の 2乗、およびランナーの最大直径の 1.6乗に比例
  • 溶融樹脂の熱拡散率に反比例

します。

冷却時間は、次の式で表すことができます。

Tc:冷却時間  Thw:最大成形品肉厚• Dr:最大ランナー直径 α:熱拡散
肉厚が2倍になれば、冷却時間は4倍になるということが理解できます。

溶融樹脂の熱拡散は

の式で表すことができます。
上記の公式は、射出成形に関わる設計者ならばご承知のことと思います。
さらに、層流と乱流のレイノルズ数の関係式は以下のようになります。

一般的には、Re>2300が乱流と言われています。(文献により違いがある)

上記の基本的な項目を意識して

  • 成形品の厚みを把握
  • 金型温度及び樹脂温度の予測
  • 金型強度面の予測
  • 必要水管径の予測、必要流動長の予測
  • 冷媒の速度、流線
  • 水管内面の粗さ、残留応力

等を評価しながらコンフォーマルクーリング設計を進めることが一番論理的で効率が良いと考えています。

次回、更に詳しく事例を入れて探求していきたく思います。