Conformal Cooling 設計技術の高度化

応用技術02

前章では、C案が1.7秒まで冷却時間が短縮でき、効率が一番高いことを皆様にご理解頂きました、冷媒を積極的に蓄熱部周辺へ誘導し、流速、流線を意識し徐熱することが重要であることもご理解を頂けたかと思います。

この究極の状態から、更に冷却時間短縮へ進めることが出来るのか?限界点を見つけるためにいろいろと工夫していきたく考えます。

まず、冷却/温調設備能力に余裕があるのならば、流量を増やすことが簡単に着手できることであり解析を実施してみました、図21の通り、ほとんど差がない結果となっています。

図20 ゲート付近平均温度から逆算した必要冷却時間

図20 ゲート付近平均温度から逆算した必要冷却時間

図21 流量を120㏄/sec、180㏄/sec、240cc/secと変化させた場合の比較

図21 流量を120㏄/sec、180㏄/sec、240cc/secと変化させた場合の比較

実際に流量を上げれば冷却効果はアップ出来るはずと思いますが、この事例では1.7秒と冷却時間を究極まで追い込んでおり、この3次元冷却入子の限界点と捉えた方が良いと判断できます。

次に、コンフォーマルクーリング形状に工夫をすることで向上できないかを検討して見ました。その設計案を図22に示しています。

図22 さらにゲート部へ水管を近づけた改造設計案と固化層比率

図22 さらにゲート部へ水管を近づけた改造設計案と固化層比率

真円水管断面では、ゲート部へ近づけることに肉厚上の限界があるため、1章で説明したように断面積を保持して圧損を起こしにくいように平らにして、ゲート部へ近づけた設計案としています。
本設計案ならば冷媒条件(120㏄/sec)は現行のままでも、固化層比率が53.5%から0.3%アップし53.8%となり、樹脂平均温度は210.2℃から0.5℃改善でき209.7℃にすることが可能な解析結果を得ることが出来ました。
図24には流速、流線の比較をしておりますが、特に圧損の発生するような傾向も見られません。

図23 改造設計案との樹脂平均温度比較

図23 改造設計案との樹脂平均温度比較

図24 改造設計案との流速、流線の比較

図24 改造設計案との流速、流線の比較

これらを総合し判断すると、図25のグラフ通りとなり、1.6秒から1.7秒付近がこのプリフォーム成形品におけるコンフォーマルクーリングを適用した際の限界点と見られ、これ以上ダイナミックな冷却時間短縮は出来ない結果となっています。

図25 改造設計案での冷却時間予測

図25 改造設計案での冷却時間予測

しかしながら、ここで強調したい重要なポイントは『1.7秒仕様のConformalCooling2より、改造設計案(ConformalCooling3)の方が より安定した成形が実行可能である』ということは明確に言えることであり、ConformalCooling設計でも上記視点で丁寧な設計をすることが肝要であるということです。

もう一点、冷却時間1.6~1.7秒という本事例は、究極成形条件に近く、一般的な金型では、冷却の課題は数多く改善できることも多く残されているはずです。

コンフォーマルクーリング設計は、従来工法のストレート水管のように製品面から遠い位置に水管を配置するものと比べ、単に3次元的な配管を設計できるという視点だけではなく、上記記述の通り、検討や解析を挟みながら段階的、論理的に設計を進めていくことが大変重要だと確信しております。

もしも、読者の中に、コンフォーマルクーリング金型を使って見たが、効果があまりなかったという事例があるならば、一度、このような点で診断することをお勧めします。
その際には、OPMラボラトリー筆者又は、上海の弊社子会社の立模激光科技(上海)有限公司へご一報を頂けたら幸いです。

これまでコンフォーマルクーリング設計で多くの実務経験をさせて頂いて参りましたが、最近さらに謙虚な気持ちになり、さらに研鑽しないとならないと痛感したことの一例に、『ダイカスト金型のWJ部入子には、弊社が多くの実績、経験を持つストリームライン方式では効果が発揮されない』場面に遭遇したことである。それは、金型に受ける熱量が、樹脂金型と比較して3~4倍違うため、ストリームライン方式では冷却能力が全く追い付かないということで、INから供給された冷媒が、OUTから吐出する前に沸騰してしまい、冷却効果はおろか、冷媒流量も全く安定しないという痛い経験をしたことであります。
ただ、エンジンWJ部の冷却入子は究極薄肉で受熱量としても最大であるというテーマではありますが、この経験は非常に参考になりました。

図26がエンジンWJ部のダイカスト金型内に仕込んだストリームライン方式の水管である

図26 ダイカスト金型のWJ入子の解析一例(鋳造解析MAGMA)

図26 ダイカスト金型のWJ入子の解析一例(鋳造解析MAGMA)

鋳造解析ソフトMAGMA(ドイツ製)で解析を頂いた結果では、流量0.2L及び1.0L/minではOUT近辺では沸点に近くなり効果がないことが解析結果として算出されていました。実際のテストでは2.0L/minの流量で冷媒が流しましたが、それでも630℃近いアルミに対しては、全く歯が立たない結果となっておりました。

このような経験からもコンフォーマルクーリング設計にはTPOに合わせ、最適な手法選択をすることの重要性があります。結果から行くと上記ダイカスト事例では『パラレルタイプでないと対処できなかった』というのが答えとなります。
さらにもう少し探求していきますと図27のパラレルタイプは、どのような構成にて設計されているか、ご存知でしょうか?一度、皆さん、じっくりと画像を見てお考えを頂きたいです。

図27 コンフォーマルクーリングのパラレル方式の一例

図27 コンフォーマルクーリングのパラレル方式の一例

ヒントは

  • 多くの冷媒量を確保したい
  • 水管流動長を短くしたい

等、いろいろと設計意図が詰まっています。

ダイカスト金型などの適用で、流量や冷却能力などを最大限にしたい場合、このパラレル方式を使った方が良いケースがあります。
ただ、適用できる形状にも制限があるゆえ、全てに適用できるかどうかは、当社に問合せを頂ければ最適な設計を施し入子としてご提供をさせて頂きますので、ご検討を頂きたく思います。

上記のことから、最終章は、このパラレル方式の解析事例で締めくくりたいと思います。
実ダイカスト実例を載せたいところですが、ユーザとの機密保持もあり、弊社設計のプラスチックス金型にて、ストリームライン方式のコンフォーマルクーリングチャネルをパラレル方式に変更した際に、どのくらいの変化が起きるかの実際に解析を致しました。

図28-① 当社が設計したストリームライン方式とパラレル設計方式

図28-① 当社が設計したストリームライン方式とパラレル設計方式

図28-② 当社が設計したパラレル設計方式の速度ベクトル比較

図28-② 当社が設計したパラレル設計方式の速度ベクトル比較

図28-①に示すキャビティ内に、左がストリームライン方式で、右がパラレル方式で各々設計をしています。(コア側の水管は、パラレル方式適用が難しく従来のストリームライン方式のままとしています。)
図28-②の流速ベクトルを見て頂くと、圧損が少なく安定的に流れていることが解ります。

ストリームライン方式と比べ、パラレル方式は、約3倍の冷媒量を流せる設計にしています。
製品サイズが小さいですが、流動長は最短経路になるようにも設計しています。
流動長は、長くなればなるほど冷却効果には不利になりますので、要注意すべき点です。

一般的な熱計算式(以下公式)に置き換えて考えると、冷却性能の優位性については私は非常に簡潔に解けると考えています。

Q=mcΔt
:Q 熱量=J
:m 質量=g
:c 比熱=cal/g・K
:Δt 温度変化=K

※質量=金型と考えますので固定値で上記式のmは固定値とする。
※比熱も一定なのでcも固定値とする。

流量が大きくなれば、冷媒流量が増えるため、単位時間当たりの除熱量も増える。
温度差Δtは、流速が遅い場合と比べて、必ず大きくなるはずなので金型から熱量Qを除熱する
という意味では、Δtが大きいほうが有利となるはずです。
複雑に考えるより、高校の物理で習った基本的な公式を思いだして数学的に解く方が単純明快です。

実際に冷却能力についての解析を比較すると図29~30のようになります。

図29 冷却性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*樹脂表面温度

図29 冷却性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*樹脂表面温度

図30 冷却性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*樹脂平均温度

図30 冷却性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*樹脂平均温度

図29が樹脂表面温度比較になります、従来工法の横穴水管とは圧倒的な差は、コンフォーマルクーリングのストリームライン方式でも、70~99℃から62℃~78℃と大きな効果を発揮していますそこから、適切なパラレル方式で設計をすると、さらに61℃~75℃にさせることができます。
図30の樹脂平均温度比較も同じことが言え、従来工法107℃~128℃、ストリームライン方式で93℃~118℃、パラレル方式91℃~113℃という結果となっています。

次に反り量解析でも図31のX方向長手で、従来工法の横穴水管と比較し、ストリームライン方式が約33%改善され、パラレル方式では約38%改善される結果となっています。

図31 反り抑制性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*長手方向

図31 反り抑制性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*長手方向

図32 反り抑制性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*短手方向

図32 反り抑制性能比較(従来工法、ストリームライン方式、パラレル方式)*短手方向

図32のY方向短手でも従来工法の横穴水管と比較し、ストリームライン方式が約63%改善され、パラレル方式では約70%改善される結果となっています。

このようにパラレルで利用できる形状は、最大効果が得るため、積極的に活用すべきでありますが実際には、詰まり等のメンテナンス性を同時に考えないとなりませんので充分な検討が必要です。
当社、OPMラボラトリーは、コンフォーマルクーリングチャネル設計手法を著名なCADシステム上に自動設計できるような機能実装の開発も並行して実施しており、皆様が簡潔に設計できて最大の効果が発揮できるようにインフラを整えていきたいと考えております。
また、コンフォーマルクーリングチャネルは、保守性を上げていく必要があり、内面の面粗度向上の手段や、詰まりが発生しないようにクリーニングする手法などの周辺設備も整備していきたく準備して参ります。

株式会社OPMラボラトリー 代表取締役 森本一穂