金属3Dプリンタの世界動向

金属3Dプリンタの世界動向

第3回コラム:OPMが取り組む”疲労強度の敵!引張残留応力“への対策研究最前線

引張残留応力! 金属3Dプリンタで製作される造形物にとって最大の敵及び難関である。

各社いろいろなアプローチによって、改善をしようとしています。
残留応力をウィキペディアで調べると以下になっています。

−以下引用(残留応力-Wikipedia

『残留応力 (residual stress)とは、 外力を除去した後でも物体内に存在する応力のことである。フックの法則により残留応力に対応するひずみを、残留ひずみ(residual strain)と呼ぶ。残留応力の分布は様々だが、物体の平衡状態を満足するため、物体全体では正負の残留応力が釣り合っている。
残留応力の発生は望ましいときと望ましくないときがある。一般的に、圧縮の残留応力は強度を向上させ、引張の残留応力は強度を低下させる。例えば、レーザーピーニングはタービンエンジンファンブレードのような金属部品に有益な圧縮の残留応力を与える。また、スマートフォンのディスプレイに使用されている強化ガラスにも応用され、大きくて薄く、かつ、き裂・擦り傷に抵抗のあるものを実現している。しかし、意図しない残留応力の発生は構造物の早期破壊を引き起こす場合もある。』
−引用終わり

要は、応力は機械部品に使う以上、圧縮の方が良く、引張は諸悪の根源です。

では、造形品の圧縮応力分布がどのようになっているかを図1に示します。

図1 造形物の残留応力分布イメージ(※イメージです)

図1 造形物の残留応力分布イメージ(※イメージです)

図1の左図は、プレートに造形物が載っている状態で、ウィキペディアにも記載があるように物体全体では正負の残量応力が釣り合っている状態です。
しかし引張応力が勝るとプレート部の弾性係数を越えて弾性変形が生じ、反りが発生します。
では、図1の右図のように、プレートを外してしまうと、どうなるか解ると思いますが引張残留応力だけの塊(部品)になってしまいます。
総和は、正負0の状態にならず、物体として極めてアンバランスな状態となります。
当社は、金属3Dプリンタで金型を作る際は、プレートを流用するハイブリッドタイプを推奨しています。

この引張残留応力を解決する為には、プレート上に造形物が載っている状態で、固溶化熱処理(所謂、焼純)を行い、引張応力を弛緩するのですが、よく使われているマルエージング鋼であれば固溶化熱処理温度は816℃であり、処理後の造形物を例えるならば、寸法精度などは愚か“グタグタ”の状態となります。その後、硬度をアップする為に、時効処理は480℃近辺で再度、熱処理を行うわけで、金属3Dプリンタプロセス終了後の熱履歴は2回実施することになります。
その後、プレートから切離し2次加工を施し部品活用をされます。
これでは、さすがにどうなの?と思われると考えられますが、欧米の研究者はレーザの照射パターン、そのものを工夫して造形物内部の残留応力低減研究を加速しています。勿論、当社も新照射パターンも開発しています。
しかし、低減は出来ますが、圧縮残留応力に変化させるところまでは到達していません。
また、できるだけ固溶化熱処理を入れたくないですので、当社は造形直後、そして時効処理のプロセスだけで造形物の内面残留応力を変化させることが出来そうなところまで到達しています、まだ道半ばですが、開発を鋭意推進しています。

表1を参照してください。

表1 造形物の残留応力、未処理とOPMが開発したプロセスを入れた場合

表1 造形物の残留応力、未処理とOPMが開発したプロセスを入れた場合

従来プロセスだと、造形直後では引張残留応力165MPa,時効処理後169MPaですが
当方の開発プロセスを入れると、造形直後では圧縮残留応力134MPa,時効処理後154MPaに変わっています。

この開発の起点は、『プラスチックス金型の3~4倍の熱量を受ける過酷なダイカスト金型の水管内部から応力腐食割れの問題が多発し、それを回避しないと、量産時に水蒸気爆発を起こすという緊急性』から、寝食を惜しみ必死に考えて来ました。

何とかモノに出来そうな感じまで来ています。
金属3Dプリンタの産業発展にインパクトのある開発になる可能性を確信しています。

以上