金属3Dプリンタの世界動向

金属3Dプリンタの世界動向

第2回コラム:『展示会に出展/脚光を浴びる』と『実際に使える装置を着実に開発する』のスタンス

<競合他社の動向(展示会の情報含む)>

当社は、金属3Dプリンタでの生産/受託加工事業及び、装置(OPM250/350L)を検討されている企業へテスト加工を行っていることはご承知の通りと思います。
今年度、装置購入検討をされている企業が極端に増え、予想していたテスト加工プロジェクト数は9月末で約3倍を超えております。また11月にJIMTOFへ新機種OPM350 Lを投入致しますのでさらに増加し3〜4倍近くなると考えております。
この状況に合わせ設計者も増員に増員を重ねて対応している状況にあります、それでも納期のご要望に追いつかずご迷惑をお掛けしていますことをこの場を借りましてお詫び致します。

さて本題に移します、今年度、国内外の展示会で競合他社ブースへ出向き積極的に見学やご担当者との意見交換をさせて頂く機会を増やしています、様々な観点で勉強をさせて頂いております。
欧米金属3Dプリンタメーカは、ブース装飾や展示方法も含め、恰好、見栄えも良く、一般受けもしやすいように良く工夫をされており、どの展示会でも人だかりができ注目を集めています。
ただし気になるポイントもあります、実務で金属3Dプリンタでの受託加工をしている私どもにとって基準面のない造形物をどのように測定し、2次加工を進め精度を確保するのだろうか?と日頃から疑問を抱いており、各社ブースでは

  • 展示されている造形物は、どこを基準にして測定しセンターをひろい。
    2次加工を進め、どのくらいの最終寸法精度で製品として完成するのか?
  • 実際どれくらいの期間、破損せずに活用できているのか?

と機会あるごとにご質問をさせて頂いていますが、海外金属3Dプリンタメーカの方々からはリーズナブルなご回答は頂けなかったのが実態であり、利用用途のメインは厳しい寸法精度の要求される市場ではなく、一部の超大手企業は除き、デザインやプロトタイプの領域から量産現場への活用方法を模索している状態にあると推察しています。

図1-① 製作物の比較(基準面の重要性)

家を建てる時に、正しい測量をしてレベル出します。
正しい測量をして家を建てないと欠陥が発生します。

基準面とは、次の加工をする為の測定基準。
建築測量と同じで精度の高い基準がなければ精度の高い最終製品は作れない

レーザだけの金属3Dプリンタでは・・・
 ・基準面を作成できません。
 ・プレートは“台座”という考え方(流用もしません)。

図1-② 製作物の比較
  • 他社が製造している部品例

    ※最終製品に仕上げるにはどのような2次加工を行い精度確保するのか?複雑な形は出来ても肉厚を一杯つけて作らないとならないなら無垢から作るのと変わらない、2次加工を進めるための基準はどこから測定するのか?疑問が残る・・・

    他社が製造している部品例
  • 市場から要求される実部品レベル

    ※市場から要求される機械部品、金型の精度要求は厳しい
    写真を見れば一目瞭然・・・OPM工法は積層と切削が装置内に共存しているので高精度を実現

    市場から要求される実部品レベル

当社は日頃から、受託及びテスト加工は厳しい寸法精度/機械強度保証は必須で、一般加工品となんら変わらない厳しい仕様/要求事項があり検査、公差外れ、設計へのフィードバック、ノウハウ蓄積の戦いです。
しかし金属3Dプリンタ市場は、まだ未成熟なマーケットであるため、顧客がトライアルをされていく毎にユーザ意識も変わるはずで、サービスビューロにも“プリントサービスをするコピー屋さん的な位置付けの会社”と当社のように“設計/製造技術者が多く在籍し毎日が改善の繰り返しとする製造業としてのサービスビューロ”というものに大別されると考えています。個人的には双方とも伸びて行くことを望んでおります。

<実際に使える装置を着実に開発するの視点1>

ご承知の通り、金属3Dプリンタメーカは、造形速度向上のため熾烈な開発競争を繰り広げています。
当社もご多分に漏れず速度向上に注力をしています、装置的にはレーザ出力アップをする方法、
レーザ発信機及びガルバノスキャナーを複数搭載しマルチにてレーザ照射をするという方法がありますが
どちらもコストアップする方向になります。我々は出来る限りコストアップしない方法で開発を進めております。第一回の技術開発報告で当社ウエブに掲載をさせて頂いた“パラレルモード”になります。無駄な時間を限りなく効率化し合理化してから、前述の方法を取るべきと考え開発をして参りました。
レーザ速度アップをするというキーワードは、速度だけではなく同時に高い溶融率を保持し、造形物内部に非金属介在物を巻込まないようにするチャンバー技術の向上も行わないとなりません。さらに長時間運転してもトラブルが出ないように耐久、再現性を含めた信頼性試験、メーカとしての保証などがあります。煌びやかなデモを見せるだけならもっと早い時期に展示会などでお見せすることもできましたが、ユーザが会場で見られ、煌びやかなデモと同じことが装置を購入してすぐに出来るものと錯覚されては大変なことになる為、入念なテストを繰返し2016年11月17日から始まりますJIMTOFにてリリースをすることに決定を致しました。
デモンストレーション内容としてパラレル照射を準備しております(当社比:従来比レーザ速度最大56%の造形時間短縮、切削速度最大58%の短縮が実現)、さらに複合型金属3Dプリンタには『切削プロセス』が最大の特徴になります、切削面の大幅な面粗度向上を実現しております。

図2 デモ概略

写真上は1年前にOPM250Lで製作した造形品です、写真下は研究で得た結果をフィードバックし製作した造形品になります。当社で設計した新型OPM専用工具で切削した造形物立壁部の面粗度比較をご覧頂くと、表面粗Ra※算術平均粗さ及びRz※十点 平均粗とも1.5倍以上改善されています、既に国際特許出願を済ませ権利化の見込みが立ち正式リリースを予定しています。

図3 新仕様工具での多層方式新加工法

<実際に使える装置を着実に開発するの視点2>

金属3Dプリンタを機械購入したユーザが円滑に運用して頂くためには、一般的な装置教育/工法教育だけでは経験から難しいと判断をしています、その背景には装置メーカから設計・製造に必要な情報提供量が欠乏しているからだと考えています。例えば材料物性/一般機械強度データ以外に、造形部品をどのように設計すればよいのかという設計指標データ、各材料に適した推奨2次加工プロセスや各種疲労試験結果(S-N曲線など)、残留応力に関係する反量の予想グラフなどを装置メーカ側から開示しユーザに最適な設計、製造を行って頂く必要があると考えています。
しかしながら上記は大変大きなボリュームのある実験をこなす必要があり、また実務を通じての経験値などを織り込んだものでなければならないため、装置メーカだけではなかなか対応しきれていないことが実態です。私どもOPMラボはソディックグループの中でその役割を担いお客様の運用を円滑化する役目を行って準備をしております。

<OPM350Lについて>

10月11日付日刊工業新聞にOPM350L装置の概要が掲載されました。

「OPM350L」の外観(材料自動排出自動供給装置付き:オプション)

装置リリースタイミングは個人的にはもう少し早く出すことができればという願望はありましたが、記載の通りでOPM350Lにはソディック社開発の方々とOPMラボ開発メンバーが並々ならぬ熱意で研究開発及びテストを繰返し推進して参りました。
他社には、さらに大型のものが造形できる装置を発表し販売されておりますが、個人的にスペックを見る限り、一般企業の設備投資判断や採算分岐点から、イニシャルコストの回収はとても難しく研究開発目的などの超大手でしか導入はできないと想定しております。
今回リリースするソディックOPM350LはX:Y:Z=350:350:350(㎜)は現実的なワークサイズとなっており、イニシャルコストは充分に回収できる領域(造形速度等)の定価設定にあると考えています。
例えは難しいのですが、350x350x350というサイズは

図4 □350㎜に収まる製品例
  • DIYが好きな方ならご存知のブラック&デッカー社の電動工具なら350㎜x350㎜にほぼ全て収まる金型なら多数個取りが可能になる
    ※私も愛用しています

  • 扇風機の羽根は、<標準が300㎜>であり心地よく、音が静かという点では300㎜以上ないといけないらしい

  • エンジンは2500~5500点ほどの部品で構成されているそうです。日本が誇る直噴4気筒エンジンのシリンダヘッドカバー部品造形ができる

  • 自動車エンジン直噴4気筒のシリンダヘッドが造形できるサイズになります。
  • 家庭用扇風機の羽根(FAN)の大きさは、300(㎜)が一般的で対応が可能になります。
  • 当社がコンフォーマルクーリング技術を世の中に知らしめた代表作品である電動工具の金型なら
    250xでは1個しか配置できなかったですが、2個並べて同時製作が可能になります。
  • 当社が得意とするプリンタ用インクカートリッジケース金型なら、従来3個取りしかできません
    でしたが、配置を工夫すれば6~8個同時製作が可能になります。

上記のように現実的なサイズとなり、製作速度や精度も大幅に向上させていますので
自信を持って市場に送り出せる装置に仕上がったと考えております。
※詳細数値/スペックは、Sodick社のホームページを確認下さい。

<展示会JIMTOFの実機デモンストレーションのポイント>

展示会のJIMTOFでお披露目するデモンストレーションは、速度・精度という面で他社を凌駕し
切削のない従来方式の金属3Dプリンタと“明確な差別化”をご覧頂ける絶好の機会と考えています。

  • パラレルモードで高速造形している様子をご覧いただけます。
  • パラレルモードで造形した部品を展示、“精度及び効率化”の主旨を充分にご理解頂けるはずです。
  • 従来工法との時間比較なども明確に示す予定です。
  • 最終部品の要求精度を達成する為、“どのように設計をしなければならないか”という点も展示をします。
  • 限りなく金属粉末供給/回収自動化を進め、環境やオペレータに極めて優しいシステム構成を提案します。

ということで厳しい製造現場で実際どう使えるのか?を体験できる展示になるものと考えております。